小さい時、家には油取り紙がたくさんあった。記憶が正しければ伯母さんの仕事の関係で貰ったもので、エステか何かの広告の載ったショッキングピンクの箱の、イメージするところの油取り紙のパッケージでは無かったのだが、大人たちがその油取り紙で顔をこすっているのを見るとそれが大人の特権を行使しまくっているように見えて羨ましかった。よく自分もその紙で顔をこすってはみたが、小さい頃なんて顔の油はほとんど無いもんだから紙はほとんどサラの状態で、大人達の使った紙のように油で透けるようなことは無かった。

 今の自分がティッシュペーパーか何かで顔をこすれば嫌でも油で紙は透けたようになる。その紙を見ると使えなかった特権をいつの間にか行使していることに気がつく。

 そのうち嫌でも透けたはずの紙が、油が無くなってきて、サラのまんまになる。例えばよくある人類の進化の図は猿から人間に向かって一番背の高いところで終わっているが、あれも本当は何にも無いところから山形(やまなり)に高いところへ上がってすーっと何も無いところに戻っていくのだと思う。

 ちなみに深海魚の浮き袋には油が詰まっていて、水圧の高いところと低いところを行き来するので普通は破裂してしまう物をその油で調節しているのだと言う。

 中国語で人を応援する時には「加油」と言うらしい。